約80~70%の眠っている毛穴を活性化する薬が本物かもしれない件
Dailymailの記事Have scientists cured baldness? New drug reveals regrowth in mice in ten DAYSが詳しいですが、本日 Science Advancesという雑誌に発表されたコロンビア大学の研究によって、まったく新しい育毛剤が開発される可能性が出てきました。
人間の毛穴の大部分(約80~70%)は一度毛が抜け落ちると休眠期に入ってしまい、しばらく新しい毛を作らない状態になるのだそうです。
その眠っている毛穴をなんとか活性化してやればフサフサになるのも夢ではないかもしれないのですが、いままでそんな都合のいい薬はないわけです。
今回の発見ではアメリカのFDAが別の病気用にすでに認可している2つの薬(ルソリチニブとトファシチニブ)が、実は毛穴を活性化する効果を持っていたということで、人間に使っても安全であることが確認されているので、毛生え薬としての許可もかなり期待できます。どちらの薬も円形脱毛症の原因となる自己免疫疾患の薬としていままさに臨床試験をしている途中らしいです。FDAの認可も遠くないように見えます。
ルソリチニブ ruxolitinib(Incyteとノバルティス ファーマ)という薬は血液の病気に使われて、トファシチニブ tofacitinib(ファイザー製薬)という薬はリューマチ性関節炎に効く薬だそうです。これを経口投与(カプセルとか)や点滴で投与してもハゲには効果はないのですが、皮膚に塗るとネズミの実験では10日間で毛が生えてくるのだそうです。
とはいっても人間の皮膚・毛穴はネズミとはだいぶ違いがあるようで、色々な薬が開発されてネズミの動物実験で効果が確認されても人間では効果がないという結果が今までにも山程ありました。
なので、今回もそんなところだろうと思ったらすでに人間の皮膚の培養細胞で効果を確認しているらしいです。これはほんとに画期的で、いよいよまったく新しい育毛剤が登場するかもという期待が高まります。
ノバルティスの株価の反応を見てみるとマーケットは冷ややかですが、インサイトとファイザーの方は上がってますね。
昔も「朗報。髪の毛は培養して増やして植え戻す時代が近い?」という記事にちょっと書きましたが、今までの育毛は「毛包から毛が抜けにくくする」か、「すでにある毛の成長を促す」かという消極的な方法しかありませんでした。
例えば、資生堂 アデノバイタルスカルプエッセンスV(下) はアデノシンを補給して、毛の成長を助ける栄養を与えているわけです。
でも、もっと直観的に毛を生やすというのは難しいのです。今回の発見で、眠っている毛穴を起こしてしまうというのは、自然な方法で副作用が少なさそうなうえに、非常に直接的な手段なので、非常に高い効果が期待できます。
今回論文が掲載されたScience Advancesという雑誌ですが、聞いたことがなかったのですが、あのネイチャー誌と並ぶ二大ジャーナルであるサイエンス誌を出版しているところの姉妹誌のようです。まだVol. 1 No. 9ということですのでかなり新しいです。コロンビア大の研究ですし、雑誌もまともなところなので、ちゃんとした研究ですね。
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