村上春樹はなぜノーベル賞候補なのか。
村上さんノーベル文学賞ならず ファンから落胆の声という記事にもあるとおり、村上春樹のノーベル文学賞落選のお知らせが毎年恒例の行事になりました。
私は理系なので文学は全然詳しくはないですが、そもそも村上春樹の文学のなにが世界で評価されているのか?イギリスのブックメーカーの評価が高いのはなぜ?なぜノーベル文学賞の候補になり得るのか?を素人ながら考察してみたいと思います。
追記。2016年もイギリスのブックメーカーで一番人気のようですね。
2016年度の残念会場はこちら。
受賞条件
私が考えるに受賞の条件は主に①各国語に訳されていて、世界中に読者がいる、②受賞が何らかの形で世界に良い影響を与える作家だと思います。
文学というのは優劣がつけにくいものです。文学的に優れた作品なら必ずノーベル賞をもらえるかといえばそうではありませんし、ノーベル賞をもらった作家がもらってない作家より優れているわけでもないと思います。ノーベル賞向きの作家というのがあるわけです。
それでも大変栄誉で、世界的な影響力の高い賞であることから、受賞者はその時代の政治・社会状況を反映していて、受賞が何らかの形で世界に良い影響を与える作家がふさわしいと思います。
そう考えると今回受賞したアレクシェービッチさんのテーマはチェルノブイリの事故を題材にした”反原発”です。これは誰が見ても政治的に正しいテーマで、受賞にふさわしいように思えます。今年いろいろあったウクライナに関連しているのも受賞を助けたでしょう。経済的な問題などなどありますが、心情的には原発事故のリスクは取りたくないし、被害も繰り返したくないというのは推進派の人でも尊重する批判しにくいPolitically correctな意見・立場です。
村上春樹さんの場合
そうしてみると村上春樹さんの場合、翻訳の多さという条件は十分にクリアしていると思います。たぶん全部の作品が英語・スペイン語・フランス語・中国語・韓国語あたりで読めると思います。私も、What I Talk About When I Talk About Running (Vintage International)を人に勧められて英語で読みましたが、作家の人となりがわかって、それなりに面白かったです。
海外に住んでいると、こちらが日本人だとわかると村上春樹読んだことあるか?俺けっこう好きなんだけど・・・。と切り出されることが度々あります。個人的な友人関係にもアメリカ人で熱く語る超ファン、ペルー人で結構ファン、韓国人ではっきり認めなかった多分かなりファン、中国人でかなりファンを知っています。彼らになんで好きなのか聞くと「なんとなく世界観と描写が好き」以上の答えを引き出せないので、個人的にはなんでそんな人気なのかよくわからないんですが、日本の作家でとびきり有名で、人気なのは間違いありません。日本を出たことがないとピンとこないかもしれませんが、予想以上に人気で、これがイギリスのブックメーカーの主な推薦理由だと思います。あとは受賞者の多くが先に手にしているカフカ賞をすでに受賞しているということ。
さて、もうひとつの条件の社会的な影響力は、どうなんでしょうか。私は村上春樹といえばノルウェイの森と短編集を一冊日本語版で高校の時に読んで、ほぼそれっきりなのでよくわかりませんが、ノルウェイの森はサリンジャーのライ麦畑で捕まえての現代日本版みたいな感じがします。
ライ麦はその当時の若者の繊細な感性・葛藤を一人称視点で言葉足らずなホールデンの(当時の)現代的な言葉遣いで鮮やかに描写した新しさとリアリティみたいなものが評価されているんではないかと思いますが、ノルウェイの森はまったくストーリーを覚えてませんが、優柔不断だけど繊細で心優しくて傷つきやすい主人公が日本の若者をある程度象徴しているような感じなのかなぁと思います。そしてその日本の若者の青春の葛藤が、意外にも全世界で共感できる普遍的なものを多く抱えていたということで広く評価されているんだと思います。私のようにあまり共感できなかった人は何が素晴らしいのかピンと来ないわけです。
春樹さんもサリンジャー好きで、自分で翻訳してるくらい影響うけているので、そんな感じなのかなと。ちなみに私はサリンジャーファンで、フラニーとゾーイーのFrannyが座右の銘です。英語版何度読んだことか。43ページだけど。
サリンジャーは優れた作家ですが、全然ノーベル賞向きじゃないですよね。なので、村上春樹さんがんがサリンジャーのような系統なら候補にはなりにくいと思います。
ただし、心優しく、正義感があると思われる作家本人の社会的・政治的な発言・立場を支持するような人たちからすると、村上春樹さんが賞をとってくれると今までの発言がぐっと力を持つので、ぜひとってもらいたいでしょう。
とくに日本のマスコミは左寄りなので、村上春樹さんが受賞となれば大喜びでしょう。日本でニュースになるのはだいたいこの思惑のせいでしょう。
でも、村上春樹さんが作品以外で熱心に発言しているようなことは、日本の枠からでて、世界的な規模でみてほんとに重要なのか?と考えると、ちょっと弱いのではないでしょうか。なので、受賞は日本で騒がれるだけで結局ないでしょう。
可哀想なのは周りの思惑から自由になれない作家本人のように思えます。「ノーベル賞については誰からも何も言われてないし実際、何の賞にも興味ないんです。」と公式に発言しているようですし、執筆活動に集中したいでしょうけども毎年こう騒がれては大変ですね。
「毎年騒がれて面倒なのではやく受賞したい、一度受賞すればもう騒がないだろう」という発言もあるそうです。
でも、このカフカ賞での発言は本心であっても言わない方が良かったでしょうね。ノーベル賞に失礼です。なんかこの発言がなかったら翌年もらってたかもしれないなんて気もします。まあないか。本人はいらないからそう発言できたのかな・・。チャンスがあったならカフカ賞をもらって2年以内位でしょうから、マスコミさん諦めましょう。
追記)あと3時間で発表です。受賞するとしても日本人が医学生理学賞とか他の賞を受賞した年には無理でしょうから2016もダメでしょうと、書いておく・・。
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