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2017年11月18日 (土)

シネッセンス細胞がアツい。不老不死とハゲの治療が同時に可能か?

最近natureにあったゾンビ細胞の記事を読んで以来、興味がわいたsenescence cellsという変わった細胞が面白い。私自身は木村拓哉似(相関係数0.12)の脳科学者なのでガンとかアポトーシスのあたりはあまりわからないので分野外から興味本位で調べてみたい。

シネッセンス細胞(老化細胞)とは

senescence cellsはJST科学技術用語日英対訳辞書では「老化細胞」とある。最近、話題に火がついた2016年の論文のネイチャー日本語版の解説記事「老化細胞を除去したマウスは長生き」でも老化細胞とあるのでこれでいいのかな。多分。senescence自体の意味が老化なので直訳だなぁ。でも個人的な好みでシネッセンス細胞と書きます。

シネッセンス細胞とは、体細胞がダメージくらったりテロメアがなくなってアポトーシス(細胞死)するはずが、なんかの拍子で死にそこねたゾンビ細胞みたいなものらしい。どうもがん細胞の増殖を抑えるための仕組みが働いて、分裂もしないがアポトーシスもしない状態になっている。しかも、いろいろ分泌してまわりに炎症を起こしたりするので厄介な存在。年をとると何にもしなくても体が痛かったりだるかったりするのはそういうことなのかな。ちなみにこの炎症はシネッセンス細胞からプロテアーゼとかサイトカインとかが分泌されて起こる局所的な炎症で2008年にsenescence-associated secretory phenotypeと命名され、研究者はSASPと呼ぶ。SASPはありまぁす!

もっと詳しく知りたい方向けに、その話題の論文の英文解説はこちら。そしてBaker et alの論文がこちら。(論文はネイチャーを購読してないと読めないと思いますが解説は読める。ほんとに読みたければSciHubがある。)

シネッセンス細胞の発見から人での臨床試験までの歴史

先程のネイチャーのゾンビ細胞の記事では、シネッセンス細胞自体はLeonard HayflickとPaul Moorheadが1961年に発見・命名しているので割りと長い間研究されてきたみたいだが、当時は「老化の細胞レベルのモデルはsenescence cellsだ」といってみても、時代を先取りしすぎて他の研究者には信じてもらえずHayflickはアホ呼ばわりされていたらしい。

ミネソタ州にあるthe Mayo Clinic in Rochesterという病院付属の研究所でBakerたちが2000年には老化現象が速く起こる老化のマウスモデルを偶然作成し、このマウスにはシネッセンス細胞が多い事が判明。このマウスモデルをつかってなんとかシネッセンス細胞だけを選択的に殺してしまえないか研究して2011年に成功。老化に伴う病気になりにくいことが判明。2016年には普通の年寄りマウスにアポトーシスを防いでいる経路をブロックするタンパク質を注射して、80%のシネッセンス細胞を殺すと寿命が伸びて、老いて毛が抜けた部分もフサフサになることが判明。製薬会社が飛びついて、もうすぐ臨床試験が3つほどアメリカで始まるところ。

これはすごいこと。普通ガンの薬や毛生え薬はネズミでは効くけど人間に試すとほとんどの場合効かないとなってしまい、多額の費用がかかる臨床試験はよほど見込みがないと始めないもの。シネッセンス細胞とがん細胞は紙一重の差に見えるからまあうまくいかない可能性が高い。しかし、うまくいくとこれはやばい。一攫千金。老化にともなる諸々の病気の抑制、寿命を延ばす、ハゲが治る、お肌の肌目がよくなるなとなと。社会的インパクトがものすごい。納税者の皆様。シネッセンス細胞の発見から56年。基礎研究は時間がかかるのです。でも画期的に新しいことが出てくるのも基礎研究からです。研究者は流動性が高いので優秀な人は研究環境が悪く、給料も低い日本からどんどんと逃げています。資源のない国としては自殺行為と思うので安倍政権というか文部科学省の文系出身の偉い方々は後生なのでどうにかしてください。私は帰りませんが。

健康食品・健康法を見直してみる

とは言え、臨床試験には数年かかるし、うまくいくとも限らない。そこで、なんかすでに安全性がわかっている体にいいとされているような食品とか、運動とか実はシネッセンス細胞を殺す効果があったりなんかしないかなぁ・・とおもっていたところ、最近はやっている朝ごはんを抜いてプチ断食する健康法が気になった。朝だけじゃなく、数日やるとショックで代謝に変化起こらないだろうか。そんな分裂もやめて、炎症を起こすような細胞を養っている場合じゃないから、シネッセンス細胞しねっ!ということにならないだろうか。

とおもって、ぐぐってみたところ似たようなことを考える人がいるようで「Is fasting senolytic?」なる記事を見つけた。要約すると、このJoshさんは、健康な細胞が保護され、ダメージがある細胞が死にやすい状態になる断食(fasting)をしながら、4日間の最後の2日にお茶にもよく含まれるフラボノイドであるquercetin ケルセチン(クェルセチン)というサプリメントを2.5g取ってシネッセンス細胞を除去の促進を狙ってみた模様です。

マウスではがんのケモセラピー中の断食は健康な細胞を保護を高め、さらにがん細胞には薬が効きやすくなるするという報告が2012年にサイエンス誌に掲載されているようです。クェルセチンはマウスではがん細胞やシネッセンス細胞の除去に効果が多少あり、食品中に多く含まれるので健康食品扱いで売っているので臨床試験を待たずに比較的安全に試せるということですね。断食中にクェルセチンを一時的に摂取して、断食で健康な細胞を保護+薬でシネッセンス細胞を除去と二重の効果を得ようという考え方の模様。

クェルセチンが健康に良いなら毎日取ったらいいじゃないかというと、そうでもない(かもしれない)ようで、マウスでは一時的に摂取するとシネッセンス細胞が減るが、続けて摂取すると逆効果かもしれないという報告もあるらしい。お茶を毎日がぶがぶ飲んでいるうちの母は元気だがそれは効果があって元気なのか、効果も副作用もないということか。(´・ω・`)ふーーむ。

アマゾンにも一件だけだがあるらしい。

Joshさんは文章から研究者っぽいなとおもったら、やはり生物系でagingを専門にした計算生物学屋さんですね。MITに籍があって独自に研究してるみたい。68歳ということでもうリタイアしたということかな。

まあ、臨床試験がおわるまではJoshさんみたいに独自にリスクを取って人柱するのは結構危険なのでやめたほうがいいです。2.5gは多い気がする。どうしてもやってみたい場合は自己責任でお願いします。

クェルセチンはフィンランドでの疫学調査で摂取量が多い人は肺がんのリスクが低いという結果もあるらしい。クェルセチン自体は食品に含まれるほどなので少量なら摂取しても問題はないはずだが、Joshさんのように一日で2.5グラム摂取とかして大丈夫なのかは不明。マウスの経口半数致死用量が160 mg/kgというから、体重500gのマウスが80mgペロっと食べたら死ぬ確率50%。単純に行くと体重50 kgのマウスなら8 g。人なら?お茶は重量で0.2%程度がクェルセチンなのでお茶っ葉を1 kg食べたら2 gか。

追記:調べてみました。一日1グラム程度なら大丈夫そう。2.5グラムはまあ思ったより危険ではなさそうだ。

でも断食中にお茶を飲むくらいなら、健康な人が気をつけてやれば、大丈夫でしょうし、なんか禅の修行っぽい。もしかしたらシネッセンス細胞の除去に多少効果があるかもしれません。断食は2日目にぐっと辛さがくるようなので、そこは乗り越えたほうが効果ありそう。Joshさんも4日やってますし。

気になる結果は?

Joshさんの結果が気になりますが、効果を確かめるのは難しいでしょう。ハゲだったのが治ったくらいの変化があれば簡単ですが、時間がかかるでしょう。

Joshさんの断食+クェルセチンの最初の記事は4月。次にquercetinについて報告があるのは10月

Results: Difficult to say with any certainty, but I did feel an ease and speed in swimming after I began re-feeding, and perhaps an easing of chronic stiffness in my low back.

ということで、「なんとも言えない」。そうです。水泳が速くなって腰のハリが緩和された気がするそうですが。 まあ、効果がなにかしらあるとしても体感しづらいことはありえますので、仕方がないですね。なんにしても、Joshさんに副作用がとくになさそうなのがよかったです。しかし、薬の副作用には個人差があるので繰り返しますが、Joshさんの真似はしないほうがいいですよ。

Joshさんのブログは他にも面白い記事が多いので注目していきます。

では、最後に最近お気に入りのユーチューブチャネル「Kurzgesagt」での老化研究最新事情の回。シネッセンス細胞の解説からはじまってNAD+の話、Stem cells幹細胞の話と続く。

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